Enrichment Analysis Tool の使い方

遺伝子リストから関連の示唆されるGOやパスウェイを検索する。

Enrichment Analysis tool は、抽出した遺伝子リストを生物学的コンテキストで解釈するのによく使われます。Gene Ontology (GO)はもちろんですが、パスウェイやサイトバンド、タンパクドメイン、miRNAのターゲットや転写因子のターゲット検索など、幅広い用途に使える便利なツールです。David Functional Annotationは無料で使えるウェブツールで、私たちもこのツールをお勧めしていますが、Subio Platformのプラグインを使うとさらに便利な使い方ができます。

結果のテーブルには、Redanduncy90というスコアがあり、どの程度重複度の高いmeasurement listかを表しています。値は、他の検索対象のリストと重複するmeasurementの数の90th percentileです。比較的ユニークなリストが欲しい場合は、このスコアの低いmeasurement list を選択するといいでしょう。

エンリッチメント解析の限界について

エンリッチメント解析は、論文から抽出された情報を元に作ったデータベースに依存する手法です。つまり、そこに根本的な限界があります。

  • すべての生物学情報を人類は網羅できていない。エンリッチメント解析は、過去に予算が多くついて研究が盛んにおこなわれた分野に偏った結果になる。未知の知識は絶対に見つからない。
  • 解析から見つかるすべての情報が文章化されるわけではない。文章化されたごく一部の情報だけがデータベースに反映される。文章化される遺伝子は、その時に影響力の強いパラダイムのもとで主観的に選ばれる。
  • オミクスが普及するにつれ、非常に怪しいデータ解析が行われた論文が大量に生産されているので、文献情報自体の信頼性が低下している。

なんとなくエンリッチメント解析やって、関連するGOやパスウェイを羅列して体裁を整えた論文が大量生産されていますが、エンリッチメント解析は何の結論も導きません。むしろ、実験結果を解釈するためのヒント提示するに過ぎません。そこから着想して、どのような実験をデザインして何を実証するのかを考えることが大事です。